オリンピックにeスポーツが採用される期待が日に日に高まってきている中で、スムーズに実現されない理由は何なのでしょうか?
実は、ゲームという特殊な環境ならではの問題があるのです。
この記事では、eスポーツがオリンピック種目に採用される際の問題点をいくつかの観点から調査してみました。
eスポーツがオリンピックに採用される際の問題点
オリンピックでeスポーツが採用されると、各国のeスポーツ選手が世界で認知度の高いゲーム対戦をしたり、レースでタイムを競い合ったりするわけですが、そこにどのような問題点があるのでしょうか?
歴史と伝統のあるオリンピックにおいて、eスポーツを競技として認定し継続して開催していくためには、決めなければならない内容が多くあります。
この章では、大きく3つの問題をピックアップしました。
eスポーツのタイトルによっては内容に問題がある
2021年の5~6月にかけて開催された「Olympic Virtual Series(OVS)」では、野球(パワフルプロ野球)、自転車競技(Zwift)、自動車競技(グランツーリスモSPORT)、セーリング(Virtual Regatta、Virtual Regatta SAS)、ボート競技(World Rowing)のタイトルが採用されました。
OVSは、東京オリンピックの一環としてではなく、あくまでも別イベントとして扱われましたが、IOC主催ということもあり、OVSに採用されたタイトルには問題がないと見て良いでしょう。
以前、IOCのバッハ会長は、「暴力や差別を助長する可能性のあるゲームは開催できない」と断言しています。
つまり、オリンピック種目としてのeスポーツではバトルやシューティング系のゲームは採用しないという見解です。
人気の高いFPSなどのゲームは銃を使った暴力的な表現があるため、平和の祭典であるオリンピックには採用されないと言われています。
eスポーツのルールが難しい
「ルールに基づき勝敗を競う」という意味では、eスポーツも野球やサッカーなどと共通しています。
eスポーツにおいては、ゲームタイトルごとにルールが異なる上に更新やアップデートがあるので、それらの違いを理解した上で観戦する必要があります。
複雑さが増すほど奥深い完成度が出るゲームは、スポーツに詳しくない人でも楽しむことができるオリンピックと相性が良くないと言えます。
タイトル選定の際には、ルールが分かりやすいという条件が加えられることになるでしょう。
eスポーツの著作権問題
eスポーツで採用されるゲームタイトルは、ゲーム会社がゲームの著作などの権利をもっています。
一般的にeスポーツでゲーム大会を開催する場合は、ゲームの著作権をもつ会社に許諾をとる必要があります。
オリンピックに採用されるとゲームの知名度がとても上がり、ゲームの売上も上がります。
するとこの著作権料が高額になるという仕組みも、eスポーツのオリンピック競技としての採用を困難にしている理由の一つです。
IOCは、この著作権料の問題を解決するためにパブリックコンテンツとしてオリンピックオリジナルのゲームを製作しようという試みもおこなっています。
果たして、IOCが有名タイトルに並ぶゲームを作ることができるのでしょうか。
eスポーツがオリンピック種目に採用される可能性
eスポーツが今後、オリンピックの正式種目になる可能性は十分に考えられます。
2020年の東京オリンピック開催には間に合いませんでしたが、現在もレギュレーションの整備やテストケースの想定などが進行中であり、2024年予定のパリオリンピックでは正式種目として採用される可能性が高まってきています。
IOC会長のバッハ氏が、「OVSは、バーチャルスポーツの分野で新しい視聴者との関わりを深めることを目的とした、新しいユニークなデジタルオリンピック体験です。その構想は、オリンピックアジェンダ2020 +5およびIOCのデジタル戦略に沿ったものです。それはスポーツへの参加を促し、特に若者に焦点を当ててオリンピックの価値観を促進します」とコメントしていることからも、前向きに採用へ進められていると見られます。
OVSは、eスポーツをオリンピックイベントとして導入したことで大きな反響をもたらし、若い層を惹きつける新たな取組みとして成功したと言えます。
オリンピック正式種目化に向けて着実に準備が進められていると見ていいでしょう。
また、2023年6月22日から25日まで、IOCは「第1回オリンピックeスポーツウィーク」を開催しました。
オリンピックにおいてeスポーツを行う形式ができあがりつつある様子が見られました。
• アーチェリー(『Tic Tac Bow』)
• 野球(『WBSC eBASEBALL:パワフルプロ野球』)
• チェス(Chess.com)
• 自転車(『Zwift』)
• ダンス (『ジャストダンス』)
• モータースポーツ (『グランツーリスモ』)
• セーリング (『バーチャルレガッタ』)
• 射撃 (ISSFチャレンジ・フィーチャリング・フォートナイト』)
• テニス(『テニスクラッシュ』)
• テコンドー(『バーチャルテコンドー』)
「第1回オリンピックeスポーツウィーク」で採用されたこれらゲームは、システムやルールを知らなくても、スポーツそのもののルールさえ知っていれば誰でも観戦できるという、ごく基本的なポイントに立ち返ってタイトルが選別されました。
観戦者の敷居は大きく下がり、IOCが目指すeスポーツのアプローチは成功したと言えるでしょう。
eスポーツがオリンピックに採用されるならどのタイトル?
それでは、eスポーツがオリンピック正式種目として認められた際には、どのゲームタイトルが採用されるのでしょうか。
オリンピックは幅広い地域と年齢層が視聴するため、観戦していて分かりやすい内容のゲームタイトルが必要となります。
その上で、ゲームを知らなくても理解でき、さらに知名度が高い人気ゲームであるといった条件がプラスされます。
具体的なタイトルは?
現在、eスポーツの大会で主流なのは、APEXシリーズ、Fortnite、PUBGといったFPS・TPSジャンルのゲームです。
これらのゲームは知名度が非常に高くて分かりやすい内容ですが、「暴力や差別を助長する恐れのあるゲームは開催できない」とIOC側で宣言されていることから、オリンピックで採用するのは難しいと見られています。
条件をクリアする可能性があるタイトルは、「Olympic Virtual Series」で採用されたタイトルです。
オリンピックならではのタイトル選考とは?
ゲームをオリンピック種目にする際に浮かび上がる問題に継続性があります。
通常のスポーツでは、時代とともにルールが変更されることがありますが、突然消滅することはありません。
ゲームもスポーツ同様にルールの更新やアップデートがあります。
ゲーム業界は浮き沈みが激しく、ゲームタイトルが打ちきりになることがあります。
オリンピックに出場するためにトレーニングを続けてきたゲームが、更新サポートを終了し競技タイトルから外れてしまうことで、出場の夢が消えてしまうこともあるでしょう。
子どもたちに夢を与えるはずのオリンピックが、逆に夢を奪うことにもなります。
ゲームタイトルを選定する際は、運営実績やサービス継続の確認なども考慮に入ることになります。
第1回オリンピックeスポーツウィーク「オリンピックeスポーツシリーズ2023」
2023年6月に開催された「オリンピックeスポーツシリーズ2023」では、「Fortnite」が、競技に採用されました。
実際に行われた競技の内容は、射撃の照準精度や走破タイムを競うもので、本来の「Fortnite」が持つアクション性や競技性がなく、思惑に隔たりができる結果となってしまいました。
この議論をめぐっては、eスポーツに対する祖語が根底にあると読み取ることができます。
「ビデオゲームを競技化したもの」と「リアル側の競技を前提に、ビデオゲーム化されたもの」と定義した結果が前提となっていて、双方の落としどころが見つけにくい状況となっているのが現状なのです。
eスポーツがオリンピックに採用される日も遠くない!
次の夏季オリンピックは2024年予定のパリで、2028年にはロサンゼルスで行われます。
その間に冬季オリンピックもあるので、eスポーツが採用されるタイミングはたくさんあります。
東京オリンピックで「Olympic Virtual Series」が開催されたように、次のオリンピックでも進化したイベントが開催されるのを期待したいです。
東京ヴェルディeスポーツ、名古屋OJAもオリンピック出場を目指して、種目採用の活動に協力していきます。
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